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頭痛③~片頭痛~

頭痛について(その3)

~片頭痛~


<はじめに>

片頭痛は「怖くない頭痛」である一次性頭痛の代表的なものです。怖くはないといってもとても辛い頭痛であることは確かです。また その特効薬があることもご存じない患者さんが多く 薬局で買える頭痛薬で何とかしのぎながら生活されている場合がとても多い印象です。

片頭痛について少しでも知っていただき頭痛に悩まされないで普通の生活を送っていただきたいと思います。


<片頭痛とは>

片頭痛は、頭痛専門外来をやっていて一番受診率の高い疾患です。特に若い女性が多く 学生さんだったり幼いお子さんがいるお母さんだったりすることが多いです。以前から頭痛に悩んでいるものの病院まで来ない人が多いのですが その診断は専門医であればそれほど難しいものではありません。

脳の血管がセロトニンという神経伝達物質の異常により拡張することにより痛みの物質が周囲の神経から産生されて頭痛となるもので 体質的遺伝的側面も指摘されています。

20歳から40歳の女性の5人に一人が片頭痛持ちであり 健康寿命を阻害する疾病の第2位とされています(ちなみに1位は脳卒中です)

また海外のデータですが 片頭痛のために22.8%の方が仕事をクビになり、38.6%が育児に影響を与え、13.1%が母親の片頭痛のために子供の勉強に支障をきたす、と報告されています。


<症状とその特徴>

典型的な片頭痛は 目がチカチカしたりキラキラしたりする「閃輝暗点」という症状を伴った後にどちらかのこめかみがズキンズキンと拍動するように痛み、吐き気から嘔吐してしまうこともあります。

厄介なのはこのような典型的なものばかりでないため なかなか診断に至らないこともままあります。


私が片頭痛と診断するのに注目しているポイントがあります。

① 頭痛が起きた時に頑張ろうとすればするほど悪くなってしまう

② 強い光や音がとても不快に感じる(パソコンの画面や人混みが辛い)

③ 天候が崩れる直前に起きやすい(雨が降る前日)

④ 女性であれば生理の前半に起きやすい

⑤ 緊張しているときは起きないが それから解放されてホッとしたときに起きやすい(土日や休日にも多い)

⑥ 母親が若いころ片頭痛持ちであった

⑦ 目の奥や後頭部から頭痛が始まることが多い


このような条件が2つ以上当てはまるようでしたら 頭痛専門外来を受診してみてください。


<治療法>

私がまだ医者になりたてのときには片頭痛の診断もしっかりされておらず、肩凝りや首凝りから始まる頭痛ならみんな「筋緊張性頭痛」と診断され 一般的な鎮痛剤と筋弛緩薬などを処方されていました。いまから考えると相当数 その中には片頭痛が混じっていて見逃されていたと思います。

しかし片頭痛と診断されても 酒石酸エルゴタミン製剤という薬しかなく 劇薬に指定されているようなこの薬に頼らざるを得ませんでした。しかし2000年いまから22年前にトリプタン製剤という特効薬が承認されてから劇的に治療は進歩することとなりました。

いままではあまり効果のない市販の鎮痛剤でごまかして嵐を過ぎ去るのを待つしかありませんでしたが、トリプタン製剤は内服のタイミングを誤らなければ即効性があり非常に有効なものです。市販薬ではないため医師の診断と処方箋が必要となります。当初は高価な薬でしたがジェネリックもあるため経済的負担はかなり減りました。さらに点鼻や自己注射薬などもあるため選択肢が広がりました。また一般的な鎮痛剤で対処していると将来的に脳梗塞を発症しやすいというこわいデータも出ています。

一番の問題はこういう特効薬があるということを知らない方がまだまだ多く 学校や職場を休まざるを得なくなり いわれのない偏見にさらされるということになります。一刻も早くに受診していただき適切な診断と治療を受けていただきたいと思います。


トリプタン製剤はとても効果があるものの 1か月に10数回も服用してしまうとなると薬剤乱用性頭痛というものが心配になります。本来効くべき特効薬がかえって頭痛に悪さをしてしまうという最も避けるべきことが起きてしまいます。そうなる前に医師の診断のもとバルプロ酸ナトリウムやカルシウム拮抗剤などの予防薬を併用する必要があります。その意味でも生活指導とともに定期的な受診は非常に大切です。


また昨年春ごろに片頭痛治療にとってはパラダイムシフトというべき0治療薬が開発されました。当院でもいち早く導入し治療実績を積み重ねていますが 驚くべき効果があることを実感しています。それはCGRP関連予防薬といわれるもので3種類の注射薬です。片物質であるCGRP自体を阻害するという薬です。月に一度の注射をすればあれほど悩んでいた片頭痛が全く起きなくなったり 起きても回数が激減し予防薬や頓服薬を減量することができるようになります。更に片頭痛の方は頭痛がしていない時でも発作が起きたらどうしようか、人混みに行きたくない、大きな音が辛いなどという生活の制限がある方がいます。それらにもこの薬は有効のようです。0しかしネックは価格が高いということです。月に12000円以上しますのでこの経済的負担が一番の問題です。しかし注射をされた方ほぼ全員が高い満足が感じていてその後も毎月継続されています。まずは半年使用してみて中止時期についは検討することとなります。


<おわりに>

片頭痛はとても辛く 女性であれば更年期が終わるまで何十年も付き合わなくてはいけない頭痛です。生活習慣などの改善も大変大切ですが 特効薬などを上手く使いながら生活の質を落とさずにいくことはできるはずです。まだ頭痛外来を受診されていない方は是非一度ご相談下さい。毎日頭痛外来はやっており小生が拝見いたしますので是非ご相談下さい。

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